当事務所にちょくちょくいただくご質問で、事業再構築補助金に個人事業主でも申請できますか？というものがあります。そこで個人事業主でも申請できるのか、また申請した場合でも採択されるのかについて解説していきたいと思います。

制度上は個人事業主でも申請可能

　事業再構築補助金でも、ものづくり補助金でも、個人事業主の方は申請可能です。例えば事業再構築補助金の公募要領では、補助対象者は以下のように記載されています。

　表の上部に「資本金又は従業員数（常勤）が下表の数字以下となる会社又は個人であること。」と記載がありますが、個人事業主には資本金という概念がありませんので、従業員数の規定を満たしていれば、申請が可能であることがわかります。

個人事業主でも採択されるか

　それでは個人事業主の方が申請した場合、採択される割合はどのくらいあるのでしょうか？事業再構築補助金では全採択者が公表されています。法人は法人番号の記載があるので、法人番号の記載のない採択者を個人事業主として、第1回から第5回までの採択者情報をもとに集計してみました。

【事業再構築補助金】

申請回	採択者数	個人事業主数	個人事業主割合
第1回	8,016	894	11.2%
第2回	9,336	1,303	14.0%
第3回	9,021	1,193	13.2%
第4回	8,810	1,188	13.5%
第5回	9,707	1,283	13.2%
合計	44,910	5,861	13.1%

　第1回のみ11.2%と少し低いですが、第2回以降は個人事業主の採択割合が13%～14%で推移していることが分かります。
　ものづくり補助金も第9回のみですが、集計してみたところ、15.8%と事業再構築補助金よりやや高いですが、同水準であることが分かりました。

【ものづくり補助金】

申請回	採択者数	個人事業主数	個人事業主割合
第9回	2,223	352	15.8%

　どちらの補助金も採択者全体の13%～15%は個人事業主のようです。

個人事業主の採択率はどのくらいか

　それでは個人事業主の採択率はどのくらいでしょうか？これを求めるためには、申請数に占める個人事業主の数を使う必要があるのですが、その情報が公表されていないため、個人事業主の採択率を調べることはできませんでした。
　ただこれで終わっては公表されている情報をもとに、ざっくりと仮説で考えてみます。令和3年度の経済センサスによると、法人数は206万者、個人事業主数は161万者とされています。法人の数のほうが個人事業主よりも少し多いくらいですね。

【令和3年度経済センサス】

　そのため単純に、事業再構築補助金の申請者のうち同程度の割合で個人事業主が存在すると考えると、個人事業主の採択者数に占める個人事業主の割合も43.9%となるはずで、その場合の個人事業主の採択率は法人に比べて1/4ほどになっていると考えられます。
　しかし、個人事業主は法人のように組織化されておらず、再構築の取り組みを行える事業者の数も少ないと考えられることから、申請者数に占める個人事業主の割合は、低いものと考えられます。どの程度低いかは分かりませんが、企業者者数に占める個人事業主の割合が43.9%という点で考えると、個人的には全体の20%程度が個人事業主ではないかと考えており、個人事業主の採択率は法人よりも少し悪いくらいではないかと勝手に推測しています。

当事務所の採択者に占める個人事業主

　当事務所では、これまで13者のサポートをさせていただきましたが、うち3者が個人事業主の方でした。また、このうち2者が採択率が30%～40%ほどとかなり低い通常枠での採択となっています。
　そのため、個人事業主だからといって採択されにくい、ということはなく、あくまで、どのような事業を展開するか、その事業が成功する確率が高いかという点が重要なのではないかと考えています。